インタビュー:なぜAIによる「画像認識」と「ハッシュタグ生成」が必要?


シルバーエッグ・テクノロジーは、アパレル業界向けツール「ハッシュタグ・ジェネレーター」を提供しています。このツールは、一見簡単そうに見えて実は非常に労力のいるアパレルECサイト内でのハッシュタグ生成・運用の問題をAIの技術で解決し、サイト管理者の工数を省くと同時に、ユーザーのハッシュタグを通じた商品探索を行いやすくするものです。

 

 

本ツールは、ファッション専門のAI開発企業であるニューロープ社とシルバーエッグ・テクノロジーのコラボレーションによって生まれました。その機能と実力について、ニューロープ社の代表取締役、酒井 聡氏にインタビューしました。

 

 

 

【INDEX】

・ファッション画像認識AIとは
・AIにタグを生成させるポイント
・画像からのハッシュタグ生成のメリット
・「ハッシュタグ・ジェネレーター」がもたらすメリット


 

ファッション画像認識AIとは

▼「ハッシュタグ・ジェネレーター」に使われている、ニューロープのファッション画像認識AIの特長について教えてください。

 

私たちニューロープは、もともと「#CBK」というレディースファッションメディアの運営を行っていた企業です。今でこそ各アパレルブランドさんが商品スナップフォトをオウンドメディアで配信するようなことが普通になっていますが、着こなしなどを横断的に見て調べるニーズは高く、私たちのビジネスはメディアに掲載されているスナップ写真と類似した商品を探す仕組みを提供する方向に進化していきました。その中核となるのが、画像認識でアパレルの分類を行う独自開発のAIエンジンです。

 

最大の特徴は、AIでの商品分類の多様さにあります。私たちのAIは色や柄など、約650種類の特徴を認識し、分類できることです。2014年から蓄積してきたデータをもとに分析しているため、競合と比較しても倍以上の粒度を誇っています。スナップフォトなど、モデルが服を着た状態で、トップス、ボトムス、手に持ったアクセサリーなど、それぞれの特徴を認識できます。

 

 

AIにタグを生成させるポイント

▼「ハッシュタグ」は、Instagramを中心としたソーシャルメディアで情報検索や情報収集の手段として、積極的に利用されています。誰でも自由に作れるハッシュタグですが、アパレル業界で「使える」タグを生み出すために重視していることはなんでしょうか?

 

AIによるハッシュタグ生成には、データ量だけでなく、質の問題があります。単にタグを生成するだけなら、野放図にタグの数が増えてしまい、収集がつかなくなります。

 

誰が見ても理解でき、使いやすいタグを生み出すには、AIだけでなく、業界の慣習やトレンドに精通した専門スタッフによるチェックが欠かせません。私たちはAIが自動的に生成したタグを、スタッフがチェックし、それを更にAIにチェックさせて分類の正しさを担保する機構を持っており、ユーザーとなるアパレル事業者様や、ユーザーにとって納得感のあるタグを提供できるよう心がけています。

 

また、表記ゆれの問題もあります。ワイドパンツひとつとっても、タグは「ワイドパンツ」か、「ワイド」と「パンツ」か、という違いがあったりします。意味が重複していたり、同じ内容なのに複数のタグがあったりすると、ユーザビリティが悪くだけでなく、SEO的にも評価が下がります。表記ゆれを吸収し、マスターデータを作って、常に同じタグを使い続けるようにできる仕組みを整えています。

 

 

画像からのハッシュタグ生成メリット

▼ なぜ、画像ベースでのハッシュタグ生成を試みたのでしょうか。テキストベースのタグ生成や、ショップスタッフによるタグ入力と比較した際の特徴や優位性を教えてください。

 

テキスト解析技術を用いて商品の紹介文からタグを作る方式は、技術的にも比較的簡単だと思います。しかし、ファッション業界ならではの課題があります。それは、シーズンが変わるごとに大きく変化するトレンドです。外見的には似た系統の商品でも、トレンドが変わると紹介文も大きく違ったものになります。AIがその文章をもと似たタグを生成すると、似た系統の商品に、まったく異なるタグが付与されることになり、検索性が落ちます。

 

また、紹介文には、ノイズになる情報も多数含まれています。例えば、グリーンのパンツの紹介文に「白のブラウスとのコーディネートもおすすめです」という文章が含まれていると、グリーンのパンツに対し、「白」や「ブラウス」といった単語がタグ化されるかもしれません。こういったノイズ情報は制御が難しく、結果的に、生成されたタグの品質を下げてしまいます。ユーザーのコメント解析にもとづいたタグ生成にも、同様の問題がついて回ります。

 

もう一つ、ECのスタッフ個人に任せてタグを入力させる方式にも問題があります。同じ商品写真やスナップフォトでも、スタッフによって何に注目するか、またどれだけ細かく分類するかは異なってきます。言葉遣いも、たとえばある帽子のスタイルを「バケットハット」と呼ぶか、「バケハ」と呼ぶかは、人次第です。

 

このような課題を踏まえて、私たちは画像認識AIによるタグ生成技術を開発しました。大量に蓄積したファッション画像をAIに学習させ、商品の形や色、ディティール形状について客観性を担保したマスターデータを作ることで、クライアント企業が発表する新しい商品に対しても、誰が見ても分かりやすく、検索性の高いタグを自動的に付与することが可能になっています。もちろん、マスターデータ自体も日々の学習で進化し、SNSなどのトレンド分析などをもとに新たなタグを増やしています。

 

まとめると、画像解析AIによるタグ生成は、ノイズの少ない正確なタグ自動生成が可能であり、網羅性や表記統一に優れていると言えるでしょう。

 

 

「ハッシュタグ・ジェネレーター」がもたらすメリット

▼シルバーエッグのレコメンドエンジン「アイジェント・レコメンダー」と組み合わせて使うことができる「ハッシュタグ・ジェネレーター」は、アパレル事業者の皆様にとってどのような効果やメリットをもたらすとお考えですか?また、消費者にとってのメリットについてもお聞かせください。

 

事業者にとってのメリットとして第一に挙げられるのは、工数削減です。ささげ業務に携わる人にとって、ハッシュタグの管理は大きな負担になっています。工数が取られますし、表記統一ガイドラインに沿ったミスのないタグの管理となると、更にその難易度は上がります。

 

第二に言えるのは、SEO対策です。定量的な効果については、サイト全体の構成ともかかわるので簡単には言えませんが、Google社のガイドラインに沿って、コンテンツの内容を明確に示す言葉をタグとしてページに記載し、またタグのリンクによってサイト内での関連ページの閲覧性を高めることができますので、プラスの効果があることは間違いありません。

 

SEO効果が高いということは、消費者(ユーザー)にとっても使いやすいサイトであるということです。商品詳細ページに記載されたタグ経由での商品探索は、レコメンド表示と並んで、ユーザーのサイト内探索をスムーズにします。

 

レコメンドエンジン「アイジェント・レコメンダー」は、ユーザーのサイト内での行動情報を分析することで好みを予測し、適切な商品を提案しますが、「ハッシュタグ・ジェネレーター」は商品情報から、ユーザーの関心に沿ったキーワードを提示し、回遊を促します。オーガニック検索で初めてサイトに訪れた、行動情報の少ないユーザーに対しても行動を喚起できるのがポイントです、AIレコメンドとAIタグ生成は、相互補完の関係にあると言えるでしょう。

 

消費者にとってのメリットをもう一つ挙げるなら、「絞り込み検索のしやすさ」があると思います。タグベースの網羅的な商品表示は、キーワードベースのサイト内検索機能を補完するツールです。自分の入力したキーワードでは表示されなかった商品も、正規化されたタグをたどることで発見できる確率があがります。

 

 

画像検索やタグの生成技術の未来について

▼御社のファッション画像認識AIをはじめ、今後画像検索やタグの生成技術はどのように進化し、世の中に広まっていくとお考えでしょうか。画像検索やタグ生成技術の未来像についてお聞かせください。

 

私たちの画像解析技術とタグデータは、最近話題になっている画像生成AIとも相性はすごくいいんじゃないかと思っています。私たちは内部的に「タグとタグの相性」みたいなデータも持っているのですが、相性のいいタグの商品を並べて「こういったものが一緒に売れてるんですよ」と見せても、実はアパレル事業者さんにとっても、消費者の皆さんにとっても、あまりピンとこないという方が多かったのです。

 

画像生成AIを使って関連性の高いタグを含む1枚の着こなし画像を生成することができれば、見る側の理解度はぐっとあがりますし、うまく行けば、潜在的に生まれていた着こなしのトレンドの芽を察知し、明確化してブームを生み出すことができるかもしれません。

 

現代は画像認識AI、ジェネレーティブAI、またレコメンドAIなど、複数のAIアプリが併存する時代になっています。それらを連携させたり、それぞれのAIアルゴリズムの長所を組み合わせたりすることで、今までにないサービスが生み出されるようになってくると思います。

 

 

(編集:園田 真悟)



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