イベントレポート:『グロースハックのその先へ』 ~ Repro Customer Engagement Conference Tokyo


2020年1月22日、渋谷のヒカリエホールにて、マーケティングにおけるカスタマーエンゲージメントとコミュニケーションのありかたをテーマとしたRepro株式会社主催のイベント、Customer Engagement Conference TOKYOが開催されました。「ゆるぎない関係を、今ここから。」をコンセプトに掲げたこのイベントでは、当社CEOトーマス・フォーリーも、「グロースハック」をテーマとしたパネルディスカッションに登壇しました。今回はそのセッションの内容をレポートします。

 

 

『グロースハックのその先へ―LTV向上のための戦略と戦術公開―』

 

本セッションでは、国内で大きな成功をおさめたB2CのWebサービス企業3社に加え、B2Bビジネスで各社の成長を支援するシルバーエッグ・テクノロジーが登壇し、各社のグロースハックに関する取り組みについて議論を行いました。パネリストはレシピ動画サービス「クラシル」を提供するdely株式会社 野村知己氏、恋愛/婚活マッチングアプリ「Pairs」の株式会社エウレカ 中村裕一氏、パーソナルトレーナAI アプリ「FiNC」を提供する株式会社FiNC Technologiesの湯通堂圭祐氏、そしてシルバーエッグ・テクノロジーのトーマス・フォーリー。Repro株式会社の山中啓奨氏がモデレーターを務めました。

 

 

立ち上げ期に重視するのは、データに基づくグロースハック戦略?

 

今回のディスカッションで最初に取り上げられたのは、各社の立ち上げ期のグロースハック戦略と、その変化。しかし、各社とも実はビジネスの立ち上げに際してはあまり「グロースハック」という方法論は意識していなかったようです。

 

エウレカ中村氏は、サービス立ち上げ期のスピード感ある施策実行という点は重要性を強調しましたが、データ分析に基づくPDCAというと、「無視する」と言い切ります。「決めたことをどんどんリリースダイナミックな施策が重要で、グロースハックやデータドリブンといった言葉はあまり気にしていなかったです」と、中村氏は語りました。

 

dely野村氏も同意見で、サービス開始からすぐはリテンション向上のためのグロースハックよりも市場におけるシェアを広げていくことに注力したといいます。一方でFiNC湯通堂氏は、施策レベルでの細かさは追及しなかったものの、サービス立ち上げの初期段階では、KPIを日ごとに記録し、どのような機能をリリースしたらユーザーに響くかを毎日のように検証していったと振り返りました。

 

各社ともサービスの立ち上げ期には、必ずしもデータドリブンなグロースハックに尽力しているわけではなく、個々に優先するべきタスクを決め、とにかくスピード感を持って進めることを重視していたようです。

 

 

サービスが軌道に乗ると重要度を増す、LTV向上施策としてのグロースハック

 

ある程度シェアやユーザーを獲得した企業にとって重要になるのが、ユーザーの離脱を防ぎ、サービスを長期的に利用してもらうためのLTV向上施策です。各社ともこのフェーズで、独自のKPIに基づきグロースハックを推進していました。

 

例えば「FiNC」は、ヘルスケアという誰もが抱える課題に取り組むサービスですが、ユーザーが利用する目的や背景は、一人ひとり異なっていたようです。湯通堂氏は、「20代であれば美容やダイエットのため、40代であれば健康のためといったように、年齢ごとのライフステージ、価値観によってアプリを利用する目的が異なるため、傾向を観察しながらパーソナライズし、KPIも分解していった」と説明します。

 

一方delyが展開するレシピ動画サービス「クラシル」では、「今日作りたいレシピがいかに早く見つかるか」がカギとなるため、滞在時間の長さを単純なKPIとして使うことはできません。まず「かんたんにおいしいく作れる」という根本的な価値をサービスとして提供し、さらに「人気のレシピ順で検索したい」「お気に入りのレシピを多く保存したい」などの「ニーズに即した施策とKPIを設置して、プレミアムユーザー向けサービスとして展開することが、マネタイズ戦略となっているようです。

 

マッチングサービスの「Pairs」では、そもそも「良い人と出会う」ことがユーザーのゴールとなるため、生涯にわたってサービスを使ってもらうというEC的な意味でのLTVは相反する概念となります。そのような指標は使わないと、早い段階で判断したと中村氏は語りました。サービスのそもそもの目的やバリュー、成長方針を見失うことなく、自社のサービスに本当に適した指標を探り当てて顧客エンゲージメントを深めていくことが、重要だと感じられました。

 

 

レコメンドエンジンも、ユニークなビジネス指標に対応しなければならない

 

このように、グロースハックを進めると言っても、各社とも画一的な指標を持っているわけではありません。レコメンドエンジンというある意味シンプルなシステムを根幹として、LTV向上のためのサービスを展開するシルバーエッグも、その導入目的は企業ごとに異なります。

 

たとえば消費者の興味を引き立てる多様なアイテムを提示してサイト滞在時間を伸ばすためにサービスを利用する企業もあれば、消費者が本当に欲しいと思っているアイテムを素早く提示し、少ない滞在時間で高い顧客満足度を与えるために利用する企業もあります。

 

フォーリーは、「利用するアルゴリズムが自社の目的に合致したものであるか、科学的にそれを検証しながら開発を行っていなかなければならない」と言います。LTVの向上を目的としたパーソナライゼーションは、グロースハックのひとつの方法論です。しかし、それは企業ごとにユニークな指標に基づいてデザインされなければならないと、彼は強調しました。

 

 

ユニークなサービスで市場を得た企業が目指す、グロースハックのその先

 

パネルディスカッションの後半では、各社のグロースハック戦略の先にある、これからの取り組みに話題が及びました。各社固有のKPIに即した戦略をとっていても、ユーザーのニーズも市場環境も変化していきます。各社とも、次のステージに向けた大胆な取り組みが意識されているようでした。

 

クラシルでは、「良い意味でのレシピ動画からの脱却」がキーワードとなっているようです。新しい機能やコンテンツで競合企業との一層の差別化を図り、ユーザーにとっての利便性を上げることが次のフェーズではないかと、野村氏は語ります。

 

一方Pairsの中村氏は、市場の意識を変えていくことに主眼を置いているようです。米国に比べ、日本、特に地方はまだまだマッチングサービスに対して拒絶反応があるとのことで、マス広告も使って、「アプリで出会うことが普通なんだ」という空気感を醸成することが、次のステージに向けて必要な取り組みだといいます。

 

FiNC湯通堂氏は、現在主力であるダイエット目的の20代〜30代のユーザーに対し、年齢を重ねるにつれて変化する悩みに沿ったサービスを提供していきたいと語りました。「ダイエットの次のヘルスケア課題は人それぞれ。腰痛かもしれないし、妊活かもしれない。一人ひとりの悩みに寄り添うサービスとなるために、ターゲット市場を定め、ブランドイメージも少しずつ広げていきたい」と、湯通堂氏は説明しました。

 

 

「次の戦略」としてのパーソナライゼーションと、そのためのメトリクス

 

核となる事業でユーザーのニーズを満たし、その周辺にあるほかのニーズを満たすことでさらなるサービスの拡充やビジネスのスケールをはかる企業にとっては、一人ひとりのニーズを予測し対応するパーソナライゼーションは重要なものとなります。

 

フォーリーは、商品のレコメンドを軸としたECにおけるパーソナライゼーションと、それ以外のサービスでのパーソナライゼーションの違いを念頭に、サービス独自のメトリクス(評価指標)の重要性を再度説きました。

 

例えば人材紹介サービスやマッチングアプリは、ユーザーに対しサービスのリピート利用を促すような指標でレコメンドを設計しては、逆効果になる可能性があります。また、不動産サービスではユーザーの閲覧行動といった基礎データのほかに、ライフステージといった変数が大きくかかわってきます。

 

各サービスにとって重要なメトリクスを発見し、かつ、それをシステムに落とし込んで利用できるパーソナライゼーション技術が、今後求められることになるというのが、フォーリーの考えです。また、そのメトリクスの評価・改善のためには、科学的な手法に則ったABテストの実施が欠かせないとも語りました。

 

 

 

データドリブンなグロースハックで成長を加速させ、その先のフェーズにまでビジネスを拡大させるには、表面的なCVやLTVといった指標に固執せず、自社のサービスにとって本当に必要なKPIを常に探し続ける必要がある。各パネリストの発言に通底するのは、このような考えかたかもしれません。

 

湯通堂氏はディスカッションの最後に、「一つの数字を見るのではなく、それによって起こりうることを想像しながらマーケターの視点で施策を打たなければならない」と語りました。ひとつの指標の改善だけを求めてグロースハックを行っても、成長には限界があります。企業を次の成長のステージへと進めるには、他社との差別化を実現するユニークなKPIがあるはず。それをどう発見し、施策に込むのか? そのための技術や方法論が、いま求められているのではないでしょうか。

 

 

 

(取材:シルバーエッグ・テクノロジー株式会社 渡邉サラ・田坂京志郎)

(記:シルバーエッグ・テクノロジー株式会社 田坂京志郎)

 

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