AIエンジンを使った、多様性のあるEC体験とは?


 

【INDEX】

・いま求められる、顧客エンゲージメントの向上
・エンゲージメント施策で大成功した動画サービス
・多様なコンテンツと、レコメンド導線で作る顧客体験
・カスタマージャーニーの各ステージで選択肢の多様性を担保
・成功しているECサイトの施策事例


 

いま求められる、顧客エンゲージメントの向上

コロナ禍によるEC景気が終息し、個人情報保護法の強化によって以前のような新規顧客の獲得が難しくなっています。サイトに訪れたユーザーを確実に購入に導き、2回目、3回目の利用を促していく、リピーター戦略の確立が求められています。

 

リピーター戦略において重要なのは「顧客エンゲージメント」です。顧客エンゲージメントの指標には、サイト(アプリ)内のユーザーのセッション当たりのPV数やページの読了率、期間あたりのサイトアクセス回数などがあります。こうした指標は、ユーザーがコンバージョンに向けて“意味のある行動を取っているか”を測るものです。エンゲージメントを上げる工夫をすることで、コンバージョン率の向上、そしてリピート購入率の向上が期待できます。

 

 

 

エンゲージメント向上施策で大成功した動画サービス

エンゲージメント向上施策の成功例と言えるのは、YouTubeです。2000年代までのYouTubeは、多様なユーザー投稿動画が揃っていたものの、ひとつの動画から他の動画への導線は弱く、ユーザーはブログなどの外部サイトに埋め込まれたYouTube動画を単発で視聴するだけ、といった使い方が主でした。しかし、2011年に入ってレコメンドエンジンをAIによる高精度のものに変えた結果、ユーザーが一つの動画を見たあとに次の関連動画を見る確率が目覚ましく向上しました。ユーザーが最後まで見たいと思える動画を次々とレコメンドすることで、ユーザーのエンゲージメント=連続視聴時間は上がり、結果的に広告収入の拡大を果たしたのです。

 

このエンゲージメントモデルを極限までつきつめたのが、TikTokに代表されるショート動画サービスです。これらのサービスには、膨大な数の投稿動画と、AIレコメンドによる導線しかありません。ユーザーが動画を見るたびに、AIが次に見たくなるだろう動画を予測してリールに繋げることで、「気が付けば何十分も動画を見続けている」、というユーザー体験を創り出しています。

 

 

 

多様なコンテンツと、レコメンド導線で作る顧客体験

ECサイトもショート動画サイトのような構造に作り替えて、レコメンドによる導線だけにすれば、エンゲージメントが上がるのでしょうか? 恐らくそれは難しいでしょう。

 

動画閲覧に比べ、商品を売るECサイトはカスタマージャーニーが複雑です。ブランドを認知し、商品を比較、検討し、購入の判断をしたのち、実際に商品を体験・評価して再び同じサイトに戻ってくるという、複数のフェーズに分かれた構造になっているため、エンゲージメント施策もフェーズごとに最適化されなければなりません。それぞれのフェーズでのユーザーの関心事に対応した施策を行い、次のフェーズへの導線を強化していくことで、ECサイトのコンバージョン率は初めて上がっていきます。

 

例えば、ECサイトの中にライフスタイルブログや、店員による商品コーディネートの投稿写真などのオウンドメディアを設置するのは、商品の検討フェーズだけでなく、購入後の体験・評価のフェーズでも大きな意味を持ちます。これらのコンテンツは商品選びの参考となると同時に、関連する次の商品選びのヒントになるからです。

 

しかし、ECサイトの管理者やショップの店員が作り上げた大量のコンテンツも、ただサイト内に置いてあるだけでは効果を発揮しません。重要なのは、カスタマージャーニーのフェーズに応じて、レコメンドアルゴリズムを切り替え、顧客の導線を最適化することです。

 

商品検討のフェーズにあるユーザーに対しては、いま見ている商品やコンテンツと一緒によく見られているコンテンツをレコメンドするアルゴリズムやチューニングが有効です。たとえば商品詳細ページや、ブログ、写真ページに、その商品やコンテンツと一緒によく閲覧されるコンテンツをレコメンドで設置します。こうしたコンテンツとの関連付けにより、顧客の関心を広げ、コンテンツ閲覧自体を楽しんでもらうことができます。またそれだけでなく、商品の利用イメージをしやすくし、購入を促す効果があります。

 

一方、購入後の体験・評価フェーズにあるユーザーに対して、過去の購入品と相関の高いコンテンツや商品をレコメンドするアルゴリズムやチューニングが適しています。メールやLINE、アプリのマイページなどを介して、ユーザーが購入した商品と相性の良い商品やコンテンツに誘導することができ、サイトの再訪率を上げることが出来ます。また、自分が購入した商品の利用法やコーディネートを見ることで商品に一層愛着が沸き、ブランドのファン化が促進できます。

 

このように、多様なコンテンツと、それぞれのフェーズに適したレコメンドアルゴリズムを使い分けることが、エンゲージメント最大化の鍵となります。

 

 

カスタマージャーニーの各ステージで選択肢の多様性を担保

ECサイトでパーソナライズされたレコメンドを行ううえで最も重要なのは、常に複数の選択肢を提供することです。ショート動画サービスでは、動画は1本のストリームとして流れてきますが、ECサイトでは構造上、商品を一つひとつ紹介するやりかたは適しません。

 

顧客がいま見ている商品やコンテンツに対し、「こちらもいかがですか?」と常に3つ以上の選択肢を提供するべきです。バリエーション豊かな商品やコンテンツから、自分で何かを選び取る行為自体が、ユーザーにとってはポジティブな体験として記憶されます。また、複数の選択肢のなかには、ユーザー自身が想定もしていなかったコンテンツが含まれていることもあります。とはいえ、選択肢の中に含まれるわずかな意外性は、必ずしもネガティブなものではありません。意外な選択肢から、ユーザーは自分の新たな嗜好に気づき、その分野を開拓していくことに繋がります。

 

「この商品を見ている人は、このコンテンツを読むに違いない」という先入観に基づいて特定の情報を押し付けてはいけません。ユーザーの嗜好は千差万別で、時とともに変化します。常に選択権をユーザー側に残すこと、またその中に意外性の余地を残すことが、エンゲージメント向上につながります。このときAIはユーザーが選択肢の中から何を選び取ったかを学ぶことができ、その結果、より精度の高いレコメンドができるようになります。

 

 

成功しているECサイトの施策事例

AIレコメンドによってエンゲージメントを向上する取り組みは、特にユーザーの嗜好が現れるアパレル業界で早くから進められています。

 

大手アパレルECサイトの商品詳細ページを見ると、レコメンドの表示領域が、商品の紹介領域(画像、説明文、サイズ表記等)と同等か、それ以上の幅で置かれていることが多々あります。これは、ユーザーがいま見ている商品を気に入らなくても、サイトから離脱せずに他の商品やコンテンツを巡回できるようにするための施策です。

 

また、シルバーエッグ・テクノロジーが行ったレコメンドエンジンの効果に関する調査では、ショップ店員のコーディネートフォトのコンテンツに、他の店員のコーディネートや、関連する商品をレコメンド表示させることで、コーディネートコンテンツの回遊性(クリック数)を180%以上、コーディネートフォトからの商品購入額を190%以上向上させることに成功したという例も報告されています。最適な商品やコンテンツをレコメンドすることで、回遊性が上がれば、おのずと商品購入額も増えるという明確な事例と言えるでしょう。

 

 

(文責:園田 真悟)



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