レコメンドエンジンってなんだろう? 仕組みと用途を知ろう


ふだん何気なく使っているネットショップやニュースサイト。そのなかに、「あなたへのおすすめ」とか、「これを買った人は、こんなものも買っています」と表示されたセクションがあるのを覚えていますか? この「おすすめ」セクションには、実はアクセスした人ごとに異なる商品や記事が掲載されています。これを実現する仕組みが、レコメンドエンジンです。

 

ECサイトやメディアサイトで、導入していないサービスは無いと言っていいほど普及しているレコメンドエンジンですが、何をおすすめとして表示するかを決定する仕組みは、それ自体が複雑なアプリケーションシステムです。その機能や品質によって、ECサイト全体の売上が大きく左右されることがあります。

 

また、機械学習・AI技術を取り入れたレコメンドエンジンはその用途も多様化しています。ECサイトだけでなくメールやLINE、あるいは実店舗でのコミュニケーションの場でも使われるようになったレコメンドエンジンは、ユーザー体験の改善に不可欠なツールと言えるでしょう。今回は、その仕組みと用途について紹介します。

 

 

【INDEX】

レコメンドエンジンの誕生
レコメンドエンジンの仕組み
レコメンドエンジンの用途
まとめ:レコメンドエンジンの本質


 レコメンドエンジンの誕生

そもそもオンラインショッピングが生まれる前、実店舗のビジネスでは、店員は顧客を観察したり要望を聞いたりして、自分の商品知識と照らし合わせて商品を提案していました。的確な商品を提案(=おすすめ)することで、売上を獲得とするとともに、顧客からの信頼を得て「次の商売」につなげることができていたのです。「レコメンド」とは、接客の根幹をなしていたといっても過言ではありません。

 

ところが、店員が介在しないオンラインショッピングのシステムでは、この1 to 1の接客ができません。また、PCやスマートフォンの小さな画面の中では、店舗のようにユーザー(顧客)が自由に商品を閲覧し、欲しいものを見つけるのも困難です。そこで、EC時代の初期から、ユーザーが商品を自発的に探すための検索システムとならんで、ユーザーが求めているものを予測し提案するレコメンドシステムが導入されるようになりました。

 

▲小さな画面での商品選びは難しく、欲しいと思える商品になかなか巡り合えない

 

 

レコメンドエンジンの仕組み

レコメンドの仕組みは、大別して2つに分けられます。「属性情報」によるレコメンドと、「行動情報」によるレコメンドです。属性情報レコメンドは、マスマーケティングにおけるターゲティングの手法として古くから使われてきたものと同じです。行動情報レコメンドは、アルゴリズムのちからで属性情報レコメンドの問題を克服し、より高い成果を得るための手法として、2000年代に入って普及してきました。それぞれの特長と課題を見てみましょう。

 

 

属性情報に基づくレコメンド

個々の商品にタグ付けされた、ジャンルや色、用途などの情報、または、ユーザーに紐づく、性別や年齢などの情報に基づいて行うレコメンドです。「オンラインショップで黒いシャツの商品ページを見ているユーザーには、他の黒いシャツをお勧め」とか「アンケートで40代・男性と回答したユーザーには、この商品をお勧め」といった、比較的シンプルな手法です。

 

現在でも、安価なレコメンドエンジンやターゲティング広告は、この手法に大きく依存しています。例えばニュースサイトの下部に表示される、別の商品サイトに誘導する「あなたへのおすすめ」などは、属性情報によるレコメンドの顕著な例と言えるでしょう。また、サイト内の検索機能にも、色やサイズなどの絞り込み条件に基づくレコメンドが使われていることがあります。

 

この手法は実装が簡単な反面、多くの問題があります。例えばニュースサイトの外部商品レコメンド(これは実質的にはターゲティング広告にほかなりません)では、「40代・男性」というざっくりしたデモグラフィック情報に対し、恣意的に「それらの年齢・年代をターゲットとしている商品サイト」をマッチングさせているため、ユーザーが本当に欲しいかどうかという意思は尊重されず、ユーザー体験は決して良いものとはなりません。

 

また、商品の色・形状などの属性によるレコメンドは、商品比較のためには役立ちますが、よりよい商品の提案という意味では、人間の接客には程遠いものがあります。「黒いシャツ」を閲覧しているユーザーが本当に欲しいものは、実はそれに合う「赤いジャケット」かもしれないのです。

 

 

行動情報によるレコメンド

属性情報によるレコメンドの問題を緩和し、より高い精度でユーザーが欲しいものを予測、提案する手法として生まれたのが、行動情報によるレコメンドです。この手法は、商品がどんなものか、ユーザーがどんな人物か、といった情報を考慮せず、「誰がどんなものを見たか、買ったか」という行動履歴を収集し、そこから「こんなものを見ている人は、これを買う率が高いだろう」といった予測をします。

 

この手法は、20世紀後半の機械学習・AI研究の成果として生まれたもので、「協調フィルタリング」というアルゴリズムをベースとして進化してきました。人間の感覚では、商品やユーザーを理解せずに行動だけ見て高度なレコメンドができるのかと、疑いたくなるものです。しかし、オンラインビジネスの世界で、膨大なユーザーの行動情報を収集し、機械学習の手法で分析・予測が行えるようになったことで、行動情報レコメンドの精度は属性レコメンドを大きく上回るものとなりました。その成果は多くのビジネスの場で実証され続けています。

 

行動情報レコメンドを使うと、たとえば、40代のユーザーがオンラインショップで10代の子供のために服を探している場合、商品閲覧の傾向を捉えて、即座に同様の傾向があるユーザーが買っている商品をレコメンドできるようになります。その商品は、結果的に「10代向け」の商品が多く含まれることになります。

 

また、黒いシャツを閲覧しているユーザーに、過去の閲覧傾向と、他のユーザーの閲覧・購買傾向を照らし合わせ、「赤いジャケット」をレコメンドするか、「黒いパンツ」をレコメンドするかといった判断を自動的に行うことができます。

 

▲誰が何を見て何を買ったのか、関係性を分析することで高度なレコメンドを実現する

 

もちろん、この仕組みにも欠点があります。まず、ユーザーの行動情報が蓄積されていない状態では正確なレコメンドができないため、完全な新規ユーザーへのレコメンドは、どうしても精度が落ちてしまいます(ただし、精度の高いエンジンであれば、数クリックのページ遷移を観測するだけで有意なレコメンドができるようになります)。

 

また、特定商品だけがとびぬけて購入されていたりするサイトでは、結果的にAIがその商品を万能の売れ筋商品と認識してしまい、バリエーション豊かなレコメンドが阻害される可能性があります。

 

そのような課題を克服するため、行動情報レコメンドには、カテゴリーごとのフィルタリングを組みあせたり、属性情報を学習に組み込んだりするハイブリッド型の手法が開発され、普及しています。

 

総論として、AI技術で「ユーザーの行動観察と学習に基づく提案」を実現している行動情報ベースのレコメンドは、属性情報によるレコメンドに比べ、より人間の接客に近い、パーソナライズされたレコメンドを実現していると言えます。Amazon、Netflixなどのオンラインサービス大手だけでなく、中堅以上のオンラインサービスの多くが、行動情報を使ったレコメンドエンジンを主力として採用しています。

 

 

レコメンドエンジンの用途

レコメンドエンジンが利用されている場面は、サイト内の「あなたへのおすすめ」表示セクションだけではありません。特に明示されていなくても、実は表示されているアイテムがレコメンドエンジンによって選ばれたものである、ということは多いです。ここでは、その用例と効果を紹介します。

 

 

サイト内での商品・コンテンツ提案

もっとも基本的なレコメンドの使い方ですが、実は目的に応じて、レコメンドの内容も異なっています。たとえば物販系のECサイトでは、類似する商品の比較のためのレコメンドや、ユーザーが知らない商品を発見させるためのレコメンドなど、用途に応じたチューニングが施されていることがあります。

 

また、ニュースサイトや漫画、動画などのコンテンツ配信サイト、不動産や人材サービスサイトでは、商品を売るためではなく、サイト内を回遊させ、より多くのコンテンツに興味を沸かせるためにレコメンドが利用されています。

 

近年では、物販サイトがオウンドメディアでコンテンツを紹介したり、逆にニュースサイトが物販に力をいれたりすることも増えてきました。そのため、商品とコンテンツのクロスレコメンドを行える仕組みも登場しています。AIを用いた行動情報ベースのレコメンドは、特にこのマーケティング手法に強みを発揮します。

 

▲Blogなどのコンテンツ選択画面も、レコメンドエンジンによってパーソナライズされている

 

 

Eメール、LINEを通じた、サイト再来訪のきっかけづくり

サイト内でユーザーの商品探しの補助をするレコメンドと違い、メールマガジンやLINEのメッセージ内に表示するレコメンドは、一度離脱したユーザーに対しプロアクティブに「次に見たくなる・買いたくなる商品」を紹介し、サイトへのアクセスを促す効果があります。

 

広告メールは、多くの場合ジャンクメールとしてユーザーから破棄されがちですが、その理由は「自分が欲しくない商品を押し付けられている」とユーザーが感じるためです。掲載する商品の内容をユーザーの関心に近づけることで、この体験は緩和され、メールのクリック率は上がっていきます。また、ユーザーに「次のメールマガジンも見てみよう」というモチベーションを暗に持たせることとなり、メール会員の脱退率を下げる効果があります。

 

メールやLINEでのレコメンドエンジンの利用は、MAやCRMによるシナリオメール/ターゲティングメールと組み合わせることで、より高い効果をもたらすことができます。CTRが数%上がっただけでも、ECサイトの購入率は大きく改善されます。

 

 

実店舗の接客支援

レコメンドエンジンは、実店舗の店員の接客をオンライン上で再現するために開発されたものですが、近年は逆に、AIが選定した商品のレコメンドを、実店舗での接客に役立てる動きが活性化してきました。

 

例えば、店舗の購買履歴データをECのデータと結合してAIに分析させることで、店舗在庫商品のなかから「次に買うべき一品」をメールやDMで提示し再訪を促すことができます。また、店員用の接客端末にレコメンドデータを流し、経験の少ない店員の接客支援に用いる仕組みも考えられます。BOPISなどのOMOの仕組みと組み合わせ、来店時に別の商品をレコメンドすることで、購買単価の向上などが実現できるでしょう。

 

 

まとめ:レコメンドエンジンの本質

レコメンドエンジンは、デジタル時代に失われかけていた「人間による接客」の長所を、AIによって再現する仕組みと言えます。ユーザーとのタッチポイントの各所で1 to 1のレコメンドを行うことで、ユーザーのポジティブな反応を引き出し、より高い売上や、サービスの利用頻度の向上を実現することができます。

 

また、AI搭載のレコメンドエンジンは、ユーザー1人ひとりに対して提案したアイテムの反応を学習し、その次の提案をユーザーの好みにより適合したものにしていくことができます。このようなコミュニケーションサイクルによるユーザーとの長期的な信頼関係の構築、そしてLTVの向上が、レコメンドエンジンの究極の目標と言えるでしょう。

 

 

(文責:園田 真悟)

 

 

 

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