レコメンド経由受注が月4.6億円増! ファッションEC「d fashion」の 1to1の取り組み – 「マガシーク」


NTTドコモとマガシークが共同運営するファッションECサイト「d fashion」が、2020年11月にリアルタイム・レコメンドサービス『アイジェント・レコメンダー』を導入。導入前後を比較すると、レコメンド経由での受注金額が4.6億円増加したと言う。同サービスの導入にかかわった、マガシークのふたりに話を聞いた。

 

マガシーク株式会社 コンシューマーサイト事業本部 インタビュー

マガシーク株式会社 コンシューマーサイト事業本部 本部長 小手川大介さん(写真・右)
コンシューマーサイト事業本部/UXデザイン部 副部長 満生智美さん(写真・左)

 


巨大ファッションECで1to1実現のためアイジェント・レコメンダーを採用

マガシークは、伊藤忠商事 繊維カンパニーが小学館の雑誌『CanCam』『Oggi』と提携し、2雑誌連動型ファッション小売事業として開始。2000年にパソコンおよびiモード公式サイトの「MAGASEEK」としてオープンした。2003年には、マガシーク株式会社として独立。2013年にNTTドコモのグループ会社となり、dマーケット内で「d fashion」を開始した。MAGASEEKとd fashion、ふたつのモール形式のサイトの運営を主軸に、個別ブランドサイトの運営や物流ソリューション等の事業も展開している。

 

MAGASEEK は、2020年で20周年を迎えた老舗ファッションEC サイトだ。平均購入単価が1万2,000円と、ファッションモール型のECサイトにしては高いのが特徴。オフィスカジュアルに強いサイトとして、30~40代の働く女性を中心に固定ファンからの支持を得ている。

 

d fashion は、1,500以上のブランドアイテムを取り揃える巨大ファッションECサイト。30代~50代の男女がメインユーザーであり、日常使いの生活衣料ほか、財布やバッグなどファッション雑貨も人気商品だ。ドコモのメッセージRでのメルマガ配信、dポイントの活用や携帯料金とまとめて支払える仕組みなど、携帯キャリアならではの強みを活かし、サイトオープンから増収増益を重ね、2020年にはMAGASEEKの売上を超える規模となった。

 

d fashionは、ドコモのスマートフォンからのアクセスが95%を占める。運営するマガシークでは、スマートフォンという小さな画面上で1to1のコミュニケーションを実現するべく、日々さまざまな施策に取り組んでいる。1to1コミュニケーションの実現に欠かせない要素のひとつであるレコメンドについて、「アイジェント・レコメンダー」導入以前はいくつかの課題を抱えていた。

 

d fashionでサイト改善やツール導入の促進、運用などを担当し、アイジェント・レコメンダーの導入プロジェクトを推進した、コンシューマーサイト事業本部/UXデザイン部 副部長 満生智美さんはこう語る。

 

「以前は海外のサービスを利用していたのですが、開発型のASPであったため、新たな施策を実施しようとするたび開発に2~3ヵ月を要し、素早いPDCAを回せないのが課題でした。2020年に契約が満了となったため、新たに複数のサービスを検討し、アイジェント・レコメンダーを導入させていただくことになりました」

 

アイジェント・レコメンダーは、複数の機械学習技術を組み合わせ、顧客の行動をリアルタイムで反映した高精度レコメンデーションを実現するサービス。過去の閲覧経路をもとに、店頭での接客のように個別ユーザーの嗜好にあった商品のレコメンドを実施する。

 

同じ商品を閲覧したとしても、それ以前の行動によりユーザーの嗜好は異なる。アイジェント・レコメンダーでは、独自のユーザー導線分析によって、1人ひとりの嗜好に合わせたレコメンドを可能にしている。d fashion のように年齢も性別もさまざまなユーザーが来訪し、1,500以上の異なるブランドを横断して取り扱う巨大サイトにおいて、1人ひとりのユーザーにパーソナライズされたレコメンドを実施するには有益なサービスだ。

 

MAGASEEKとd fashion、ふたつのサイトの責任者である、コンシューマーサイト事業本部 本部長小手川大介さんは、導入の決め手になったポイントをこう語る。

 

「ファッションECでもっとも重要なのは、日々の運用です。その運用に耐え得るフレキシブルさを持っていること、また、シルバーエッグ・テクノロジー様より『このページのレコメンド覧には、こんなモノが出るようにしましょう』といった具合に、私たちが想像しやすい形でかなり具体的なご提案を初期の段階でいただき、それが我々のやりたかった方向性と合致していたことが決め手となりました。カスタマーサポートも充実しており、パートナーシップを組んで、一緒に課題に取り組んでいただけることが伝わってきたのも大きかったです」

 

MAGASEEK とd fashion、ふたつのEC サイトを運営するコンシューマーサイト事業本部では、すべてのメンバーが売上や利益にかかわるKPIを持っており、そのための手段は自ら考え実行、かつ、単体のサービスごとの費用対効果は追求しないという方針だ。

 

今回のようなサービスの導入は、サイト改善業務の一環であり、UXデザイン部が担っている。アイジェント・レコメンダーの導入は、UXデザイン部に所属する満生さんが自ら選び、導入プロジェクトを推進し、運用を行っている。こうした主体的な導入・運用は、サービスの良さを最大限に引き出すことに寄与していると言えよう。

 

アイジェント・レコメンダーのユーザー導線分析機能

アイジェント・レコメンダーのユーザー導線分析機能

 

レコメンド経由受注4.6億円増社内からも「自分が欲しいものが表示される」の声

導入決定からサービス構築までに要した期間は約2ヵ月。アイジェント・レコメンダーは、複数の機械学習技術を組み合わせているため、実際に稼働してから1~3ヵ月をかけてAIが学習し、レコメンドの精度を上げて成果につなげていく。学習期間は、AI による計算外のロジックで補填する仕組みだ。

 

「初期設計についてはかなり綿密に打ち合わせをさせていただいたため、イメージのすり合わせはできていました。レコメンドを導入するページ数が非常に多かったため、技術的な工数がかかったのはたいへんでしたが、シルバーエッグ・テクノロジー様にかなり手厚くフォローしていただいたため、予定どおり進捗できました」(満生さん)

 

d fashionでは、トップページ、商品詳細、検索結果など、主要なページにはほぼレコメンドを導入している。海外製のツールを使っていた時期には技術的な制限から、着手できていなかった購入完了ページやエラーページにも、シルバーエッグ・テクノロジーの提案を受けて導入、CVR などで好調な数字が出ていると言う。

 

アイジェント・レコメンダーはサイトにタグを入れるだけのシンプルな実装も特徴のひとつ。またシルバーエッグ・テクノロジーには、レコメンドエンジンひと筋でやってきた実績と豊富なノウハウが蓄積されている。よって、それぞれのサイトの特徴を踏まえ、成果の出るページとアルゴリズムの組み合わせのアイディアを、初期段階から提案できるのだ。

 

導入から5ヵ月。まずはシルバーエッグ・テクノロジーから提案があった「これさえおさえておけば」という鉄板のアルゴリズムを導入し、AI が学習を終えてチューニングし、成果が出始めているところだ。たとえば、レコメンド枠の表示は3カラムと4カラムどちらが良いかなどUI 面のチューニングは、マガシーク側で随時AB テストを実施。アルゴリズムについては、データをもとにシルバーエッグ・テクノロジーが調整を行っている。

 

「わずか5ヵ月ですが、アイジェント・レコメンダーの導入は明らかに成果につながっています。あくまでGoogle アナリティクスでの、レコメンドを経由したすべての受注の合計ですが、アイジェント・レコメンダー導入前後で比較したレコメンド経由の受注金額が、月額で4. 6億円増となっています」(小手川さん)

 

「行動履歴が即時で反映されていることがわかります。レコメンドエンジンによっては、データの反映が翌日であるものもありますが、その場合はお客様のご要望に応えきれていないのではないかと思います。AI のロジックと言ってもなかなか伝わりづらいのですが、自分で実際に使ってみてすぐに行動が反映されているのがわかりますし、社内のメンバーからも『自分が欲しいものが出てきている』との声が上がっています。また、管理画面から、各レコメンドの成果を簡単に見るのも助かっています。日々の運用業務を担当するメンバーがそれぞれ確認し、AB テストの実施に活かすことができています」(満生さん)

 

マガシーク株式会社 コンシューマーサイト事業本部 インタビュー

 

1,500以上のブランドアイテムを横断して取り扱う大規模サイトで、ユーザーの行動情報を元に、リアルタイムでそのユーザーに最適な商品を、ブランドを横断して選び、オススメするには、膨大なデータの処理を必要とする。リアルタイムなレコメンドの安定稼働が実現しているのは、シルバーエッグ・テクノロジーのデータベースやサーバーなどの入念なインフラ整備に寄るところが大きい。

「自分たちの仕事はここまで、後は事業者に任せるという姿勢のところもありますが、シルバーエッグ・テクノロジー様はフォローが手厚く、お願いして本当によかったと思っています。初期設計の際、こちらからの要望についても、柔軟にローンチに間に合う形で取り入れていただきました。予想していたよりもかなりサービスが良かったというのが本音です」(小手川さん)

 

今後は、AI やオーディエンスデータの活用などにより、ユーザー1人ひとりが、その瞬間欲しいものを提供できるよう、1to1の取り組みをますます強化していくのがマガシークの方針だ。

 

「奇を衒ったことはせず、きちんと買いやすい、だからまた来たくなる、スーパーマーケットのようなサイトを目指していきたいと考えています。基本に忠実にやっていきたいため、たとえばデータを分析した結果から読み取れることをアドバイスいただくなど、シルバーエッグ・テクノロジー様のご協力をいただければと思います」(小手川さん)

 

ウェブ接客ツールについては、アイジェント・レコメンダーと連携するサービスの導入が決まっている。メールについても、データを活用し1to1を強化する方針だ。シルバーエッグ・テクノロジーと二人三脚で取り組んだレコメンドで、着実に成果を出したd fashionの、今後の取り組みに注目したい。

 

* 本事例はECzineに掲載した記事の転載となります。



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