内製リプレースか、外注継続か? 求職者を支えるために選んだ、レコメンドAIの選択 – 「SBヒューマンキャピタル株式会社」


“「働く」を変える。”を経営理念とするSBヒューマンキャピタル株式会社(以下、SBヒューマンキャピタル)は、転職情報、人材紹介、アスリートのセカンドキャリア支援など、個人のキャリアとワークスタイルを支える多様なサービスを展開しています。20年を超えるイーキャリアのサービスの歴史のなかで、サイト内でユーザーと企業とのマッチングを実現させるための仕組みも、常に進化し続けてきました。

 

今回は、SBヒューマンキャピタル 事業開発本部 本部長 黒崎 拓様と、マーケティング部 部長 流石 聡子様に、マッチングのためのAI技術の選択についてうかがいました。

 

【INDEX】

・パンデミックと機械学習
・マッチングエンジン内製化への挑戦
・外注と内製、それぞれのメリット

 


パンデミックと機械学習

▼SBヒューマンキャピタルは、複数の人材サービスを運営されています。その中で、サイトへの集客やマッチングはどのように実現されているのでしょうか?

黒崎:当社には、総合転職サイト『イーキャリア』、転職アドバイザーを介して相談できる『イーキャリアFA』そして、オークション型の転職サイト『キャリオク』と、3つのサービスの柱があります。それぞれのサービス運営は個別の担当部門が行っていますが、サイトのプロモーションや集客に関しては、事業開発本部が横串で担当しています。

 

流石:企業や求職者の皆さんの課題を解消し、企業の「採用数」を上げていくのが、人材サービスの価値です。ただ、実際の採用数は私たちサービス事業者には見えません。ですから、その数値に一番近い「応募数」をKPIに置いています。採用の母集団形成に対し責任を持つのが、事業開発本部のミッションです。

 

応募数向上のためには、どのような求職者さんにサイトに来てもらうのか、またどうやって求職者さんに「応募しよう」と思える求人案件を見てもらえるかが、重要になります。また、求職者が応募しやすい環境や、反対に企業が採用しやすい環境を整えることも、重視しています。そのための様々なツールをサービスに実装し、応募数の拡大や、求職者・企業双方の満足度向上に努めています。応募者に適切な求人案件をレコメンドし、マッチングを促すAI技術も、そのひとつです。

 

▼2020年からのパンデミックは、人材サービスサイトの運営にも影響を及ぼしましたか?

流石:はい。求人傾向の変化もありましたが、リモート対応で求職者をサポートする仕組みが一層求められるようになったと思います。オンライン面談ツールや、自己PR動画機能の活用は、従前から提供していたものですが、このコロナ禍で利用が非常に増えました。行動制限への対応が理由ですが、結果的に採用企業側の工数削減にもなるということが実感いただけたかと思います。

 

黒崎:会社としては、このようなユーザビリティを高める機能の充実を進めていく一方、その費用対効果に対しても敏感になるようになりました。そのため、求人案件レコメンドの仕組みも、あらためて社内で「当社のサービスに最適なものを、自分たちで作れないか?」と検討を始めました。

 

ちょうど、AI・機械学習系の開発プラットフォームが市場に登場したり、エンジンがオープンソース化されたりして、開発期間やコストを下げられる状況になってきたことも、この検討を後押ししました。

 

SBヒューマンキャピタル 事業開発本部 本部長 黒崎 拓氏

SBヒューマンキャピタル 事業開発本部 本部長 黒崎 拓氏

 

レコメンドエンジン内製化への挑戦

▼イーキャリアでは、これまでシルバーエッグのレコメンドエンジンを採用いただいていました。今回自社開発を試みたのは、どのようなエンジンだったのでしょう?

黒崎:求職者と求人とのマッチングを促す仕組みは、基本的に求職者に対し、適した求人案件をレコメンドすることで実現します。シルバーエッグの「アイジェント・レコメンダー」は、求職者が今までどんな求人案件を閲覧してきたかという「行動」をキーとして、最適な求人案件を予測し提案していました(*)。

 

今回自社開発をしたのは、この仕組みとはことなり、求人案件の内容を解析し、「似ている求人案件」を提案するシステムです。大手プラットフォーマーのAIサービスを使って開発しました。

 

流石:シルバーエッグと同じ、行動情報を使った協調フィルタリングアルゴリズムでのレコメンドは、検討はしたものの、十分な品質のものをオープンソースのエンジンで作成できるか疑念もあったため、異なるアプローチをとり、比較してみることにしました。

 

*シルバーエッグのレコメンドエンジン「アイジェント・レコメンダー』には、ユーザー行動情報を分析する複数のアルゴリズムが実装されている。一部補完機能として、行動情報を扱わない文章解析などのアルゴリズムも提供している。

 

▼実際、内製での開発をしてみて、いかがだったでしょう?

流石:開発自体は、比較的短期間で完了することができました。まず、時期的に社内のエンジニアリングリソースに余裕があり、体制が作れたことが幸いしました。また、プラットフォーマーのサービスを利用したため、コアとなる機械学習アルゴリズムも彼らのものをそのまま利用でき、ゼロからスクラッチで開発するよりは難易度も下げることができました。自社サービスへの最適化は、アルゴリズムが出した予測に対し独自のセグメンテーションやフィルタリングを行うことで、実現しようと考えました。

 

黒崎:実際、開発着手から実装までは2か月弱で実現できました。アルゴリズムの計算スピードも、十分ビジネスに耐えうるものができたと思います。

 

SBヒューマンキャピタル マーケティング本部 マーケティング部 部長 流石 聡子様

SBヒューマンキャピタル 事業開発本部 マーケティング部 部長 流石 聡子氏

外注と内製、それぞれのメリット

▼シルバーエッグのレコメンドエンジンと、自社開発のエンジンを比較してみて、いかがでしたか?

流石:両エンジンの比較のために、2か月ほどのテスト期間を設けました。厳密には、同時ABテストを行うべきなのですが、本番環境の都合で実現できません。まず片方のエンジンを所定の期間運用し、その後、もう片方のエンジンを同じ期間だけ運用する、という前後比較テストのセットを、複数回行って、求職者が申込に至るコンバージョン率を中心に比較しました。

 

結果として、コンバージョン率ではやはり、シルバーエッグのレコメンドエンジンのほうが、優れているということがわかりました。特に、メールを介したレコメンドサービスの「レコガゾウ」は、圧倒的でした。シルバーエッグのエンジンを、自社開発のエンジンにリプレースすることはできない、というのが結論です。

 

黒崎:自社開発のエンジンが低コストで完成出来たことは良かったです。反面、アルゴリズムの根幹部分をプラットフォーマーに依存せざるを得ず、精度を上げるためのこまかなチューニングができないというもどかしさがありました。専門業者レベルの精度を出すには、やはり技術的なレべルアップが相当必要なのでしょう。

 

コンバージョン率では差がでましたが、自社開発エンジンもコスト感などを見ながら適切なポイントで活用してゆく方針です。すべてのアルゴリズムを行動情報ベースのものに依存するというのも違うのかな、と思い、複数の手法によるレコメンドは維持すべきだと判断しました。

 

▼これからのAI技術やレコメンドエンジンに求めるものは、なんでしょうか?

流石:AIも多様性だと思います。例えばレコメンドエンジンでも、予測の品質がさほど良くなくても、コストが見合えば使ってみたいと思えるシステムはあるかと思います。また、ユーザーの価値観も多様ですから、様々なアルゴリズムで一人ひとりの価値観にマッチしたレコメンドができるようになれば、より顧客満足度が高まるのではないかと思います。

 

黒崎:シルバーエッグのような専門業者を使うメリットは、自分で解決策を見つけるのではなく、プロに相談して解決できるところだと思います。レコメンドエンジンも、高品質で、かつ多様なアルゴリズムを開発し、提供いただけると嬉しいです。

 

SBヒューマンキャピタル AI導入インタビュー

 

 



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